
最近「カスタマーエクスペリエンス(CX)」という言葉をよく聞くようになりました。CXは、売上や顧客維持率に影響します。別の言い方をするなら、CXは会社の利益に直結するものです。CXとは、顧客(または見込み客)があなたの会社と接するすべてのインタラクションをまとめたものです。デジタルプレゼンスや物理的な存在感、従業員、顧客ケアのプロセス、そして会社のブランドなどすべてが含まれます。世界中でデジタル化が進むにつれ、顧客が企業を品定めしたり比較したりすることがこれまで以上に容易になりました。そのため、良い製品を適正な価格で提供するだけでは、もはや十分とは言えなくなってきています。CXは、これまでのように「後付けのおまけ」のようなものではなく、購入の意思決定プロセスにおける重要なステップとなっているのです。では、セルフストレージにおけるCXとはいったい何でしょうか?この記事では、顧客が寄せる期待、サービスと製品の提供、そしてその管理方法についてご説明します。
エクスペリエンス=サービスではない
CXは、優れたサービスを提供すればいいというものではありません。CXとは、会社のブランドやビジネスのあらゆる側面を網羅するものであり、顧客が会社と接するすべてのタッチポイントの総和なのです。これらのタッチポイントの中には、企業が部分的にしかコントロールできないものもあるため、慎重にCXを作り、管理することが重要になります。例えば、営業時間外の電話に対応する外部コールセンターが良い例です。たとえ第三者が原因だとしても、そこで顧客が受けた悪い体験は、あなたの会社の悪いCXとして捉えられるからです。
各タッチポイントを顧客の視点で見直してみましょう。見直しに役立つKPIは、カスタマーエフォートスコア(顧客努力指標)です。顧客があるステップを完了して次のステップに移るのに、どれだけの労力が必要かを示す数値です。労力が少ないほど良いということになります。セルフストレージ企業で顧客が契約までにかかる労力を例にご説明します。A社では、まず顧客にメールを送って無料ユニットについて案内します。その後、顧客はオンラインフォームで申し込みをして、店舗まで赴いて契約書類に署名し手契約します。一方、B社では、ユーザーがアプリで無料のユニットを選び、すぐに予約してデジタルで契約することができます。仮にB社の方がA社より価格が多少高くても、B社のような楽な方法をお客様が好むことは容易に想像できるでしょう。
結論:顧客の負担を減らすことで、多少高い料金でも適正価格だと納得してもらえる
顧客の立場に立って考える
自分の会社のCXを知る最良の方法は、自分自身で経験することです。顧客の立場に立って、実際の顧客と同じように申し込みや契約のプロセスを踏んでみましょう。顧客がセルフストレージ施設を探し始めた瞬間から契約を終えて退去するまで、すべてのインタラクションとタッチポイントをマッピングします。そうすることで、障害や改善点が見えてきます。顧客がどのような状況に置かれているかを知ることで、顧客をより深く理解し、そのニーズを予測することができます。また、この作業によって重複しているプロセスや非効率なステップなどを発見することもできます。顧客の視点で申し込みや注文プロセスを絶えず微調整し、最高のCXを提供していると胸を張って言えるようになってください。
結論:顧客の視点でプロセスを確認することで、より良いCXを生み出せる
お金だけもらって逃げてはダメ
あなたは、会社の利益を上げたくて今この記事を読んでいるのだと思います。その目標を達成するためにも、人間相手の商売であることを忘れないようにしましょう。人は誰でも特別扱いされたり、感謝されていると感じたいものです。多くの企業は、顧客の獲得にリソースを割きすぎチェ、顧客の維持を疎かにしてしまうという過ちを犯しています。新規顧客の開拓よりも既存顧客の維持の方が安くつきます。契約書にサインして利用を開始したからといって、その顧客の体験、つまりCXをないがしろにしてはいけません。「購入するときは素晴らしい体験をしたのに、購入した後はひどい体験をした」なんて経験がある人も多いのではないでしょうか。お金を払った後は大切にされないと顧客が感じてしまうと、そんな体験をした会社は「お金を払った後の顧客を大切にしない会社」というレッテルを貼られてしまいます。前述のとおり、顧客は企業間を比較し、簡単に別の会社に乗り換えます。顧客体験が終わるときは、顧客がセルフストレージを借りた時ではなく、退去したときです。既存顧客にも次のような方法で積極的にアプローチしましょう。
- 地元の引っ越し業者や、不要品を寄付できる地元の慈善団体のリストを提供する
- 新規利用者に利用状況を確認するフォローアップを行う
- 開錠できなくなった時に備えて、あらかじめ情報を提供しておく
- 顧客が小さな子供を連れてきたときのために、塗り絵などを用意しておく
- 誕生日のお祝いメールを送る
これらは、既存顧客に感謝の気持ちを伝えることができ、かつ低コストで手間のかからないサービスの一例です。こういった行動に顧客はきっと感謝してくれるでしょう。
結論:既存顧客のCXを疎かにしてはいけない