Unwired Logic株式会社

セルフストレージ業界におけるIoTトレンド:先見の明のある「X1Studio」リーダー対談

UL: X1Studioと御社のプロジェクトについて教えてください。 

私たちがX1Studioを設立したのは、新しいテクノロジーがますます速いペースで進化していることを実感したからです。その結果、特に日本市場はこの急激な変化に対応するのに苦労しています。 そこで、私たちは建築・建設分野におけるIoTアプリケーションの技術設計会社が不足していることに目をつけ、そのギャップを埋める事業を始めたのです。私達の役目は、ゼネコン、建築設計会社、熟練したインテグレーターの橋渡し役となることです。 

例えば、私たちが現在取り組んでいるプロジェクトのひとつに、ビルへのスマートエアコンシステムの導入があります。 空調設備は施設のエネルギー消費の約40%を占めていますが、私たちはそのうち約4分の1が無駄になっていると推測しています。現在主流のシステムは、暑ければ空調システムの電源を入れ、寒ければ電源を切る、つまり反応型です。これを覆すために、適応型AIである「Brainbox」が操縦する空調システムを設計しました。さまざまな環境のインプットからモデルやアルゴリズムを構築し、空調設備をプロアクティブに管理する事でより効率的になり、結果的にCO2排出量も少なくなるのです。 

UL: 今年から2022年にかけて、IoTのどのような点がトレンドとして注目されると思いますか? 

スマートデバイスは、内部のデータ処理能力が向上する傾向にあると考えています。現在のほとんどのデバイスは、すべての情報をクラウドに送信することに依存しています。しかし、クラウドスペースは高価ですので、製造業者らは膨大な量のデータのやり取りを減らす方法を探します。デバイスをよりインテリジェントにすれば、プロパティ内のデータの一部をローカル制御で処理することが可能になります。 また、特に5Gネットワークの導入により、より多くのデバイスが相互に通信するようになります。 消費者向けのIoTは、時にガジェット的な要素を持つことがありますが、現在ではそれらの機器が統合され、ユーザーエクスペリエンスが向上するケースが増えています。そのため、消費者の家では、スマートミラーとスマートスピーカーの機能を別々に持つのではなく、統合されたデバイスを持つことになります。いわゆる「脱ガジェット化」です。 

UL: 今後数年間でIoT技術を優位に活用するのはどの業界だと思いますか? 

商業施設では、ホテルを中心としたホスピタリティ分野が大きく変化していきます。今回のパンデミックは、業界がいかに脆弱であるかを示しており、今後、消費者は自分の身を守りたいと思うようになるでしょう。 IoTはいわばホテルがより安全になるための手段とも言えます。また、オフィスのスペースも変わるでしょう。 コロナの後、人々がオフィスに戻ってくると、以前のようにはいかなくなります。 今後は、大規模なキャンパスではなく、ハブオフィスやシェアオフィスが増えていくことになるでしょう。人々が出入りし、さまざまな場所で仕事をするようになるため、より多くのトレーサビリティーと透明性が必要になります。これらの動向は、商業ビジネスにおけるIoT技術の導入を推し進めていくでしょう。 

UL: 日本とAPAC地域の他の市場を比較して、何か違いがありますか?  他のグローバル市場ではどうでしょうか? 

それを測るための指標が「スマートシティ・インデックス」です。2020年にはシンガポールがトップになり、APAC地域から多くの高ランクのスマートシティが見られます。日本はその点では遅れているのです。世界的に見ても、他の地域に比べて約20年遅れていると言われています。 

UL: その上で、トヨタが富士山に建設しているスマートシティについてはどうお考えですか? 

とても素晴らしい取り組みですし、私達は支持します。しかし、それはトヨタのプロジェクトであり、すべての技術はトヨタによるものです。 他の国々では、同様のプロジェクトの場合、オープンなプロトコルを採用しています。自分のデバイスが他のデバイスと会話できるものであれば、参加することができます。 

UL: そのような環境を実現するために、日本政府は何をすべきでしょうか? 

私たちはこれを「IoTの民主化」と呼んでいますが、政府は標準化とオープンプロトコルを推進しなければなりません。現在のところ、プラットフォームにはアマゾンとマイクロソフトの2つの大きなプレーヤーがいます。Microsoft AzureまたはAWS上で学び、実行することができます。APIとネーミングスタンダードは、多くの整理が必要ですが、「Haystack」プロジェクトは、このような状況に最適な秩序を作ろうとしています。名前の標準が国を超えて共通であれば、デバイスがお互いに話し合えることを保証できるのです。日本では経済産業省でデジタルトランスフォーメーション(DX)推進施策が設立されましたが、これが稼働すると様々な変化が期待できます。ですが、そうなるまでには時間がかかるでしょう。日本でデータベースを管理するには、一般的なルールがあるのです。しかし、多くは物理的なデータベースに関するもので、デジタルに関するものは少なく、IoTに関するものも特にないのは、導入率が低いからです。 

このように、政府がすべきことはたくさんあります。 

UL: IoTプロジェクトでは、他にどのような課題がありますか? 

日本での大きな課題の一つは、技術的な専門性です。日本ではIoTの専門家の教育が遅れている一方、フランスでは、スマートビルディングを学士課程で学ぶことができます。私たちは、パートナーと協力してこの問題に取り組んでいます。 パートナー企業の社員がX1Studioに来て、IoTやスマートビルディングに関する研修を受けられるような、研修サービスなども予定しています。  

さらに、日本の労働文化は失敗に対して非常に厳しく、IoTに限らず多くのプロジェクトで大きな障害となっています。新たな試みへの恐怖心をなくすためには、もっと実験や失敗を奨励する必要があると考えています。 

UL: 最後にメッセージをお願いします。 

私たちにとってのX1Studioは、コンセプトを証明することです。 日本をはじめ、様々な分野でIoTやスマートビルディングには多くの可能性があります。私たちは、日本の企業がこの新しい技術を採用し、その可能性を活用し挑戦する事を後押ししたいと考えています。是非スマートシティを増やしていきましょう。 

X1Studioに関する詳細はこちら:x1studio.co.jp