前回お届けしたオーストリアのITコンサルティング会社「Karibu」のCEO、セバスチャン・ケレケス氏のロングインタビューの後半をお届けします。今回は、セルフストレージ業界におけるアクセス制御や今後の展望について詳しいお話を伺いました。

UL:セルフストレージのアクセス制御については、どのようにお考えですか?
セバスチャン:セルフストレージにアクセス制御機能を導入する費用は決して安くありません。以前はドア1枚につき4万円弱も必要でした。今では2万5000円位に下がっているかもしれませんが、それでも全施設に設置するとなると多額の費用がかかります。ユニット数が増えればその分費用もかさみます。もし、そのアクセス制御機能に何か問題が発生した場合は、その機能を外して新しい錠前を購入しなければならない可能性もあります。事業者にとっては、このようなコストは非常に大きな負担です。。そのため、アクセス制御については、より手頃な価格で信頼性の高いソリューションを探し求めています。ドア1枚あたりに必要なハードウェアすべてを1万3000円ほどで賄える、そんな製品を求めています。事業者にとっては夢のような話です。
事業者に「ドア1枚あたり1万3000円」と言えば、皆が興味を示すでしょう。ヨーロッパを中心に知られているEntryfyというアクセス制御製品の場合、それ以下の金額でも装備できますが、事業者の中にはこの金額でも二の足を踏む企業もあります。その場合は、入口の暗証番号入力やキーパッドロックなどのソリューションを探す必要があります。これはコストも低く、自動化できるメリットもあります。あとは、意匠を凝らしたスマートロックを各ドアに取り付ける方法もありますが、1万3000円以下でなければなりません。
UL:AIやIoT(モノのインターネット)は、アクセス制御やセルフストレージにどんな影響を与えるとお考えですか?
セバスチャン:IoTを利用して、動画やオーディオ、温度データなど、あらゆるタイプのセンサーを施設に設置することが既に可能になっています。それらを利用して、アラームが鳴るように設定したり、アラームが作動したらすぐに携帯電話に表示され、誰が倉庫にいるのかを確認できるような総合的なエクスペリエンスも実現できます。IoTに対応したセンサーを現場に設置することは、もはや必須であるとさえ思います。誰かが侵入したときにアラームがある方がいいですし、どこかにメールで通知が届くだけでなく、ITシステムに通知する必要があるかもしれません。システムと統合され、会話ができるような設定も必要になるでしょう。
AIを使うと話題性はありますね。活用例としては、競合他社の価格を観察してそれに応じて調整していくというものがあります。市場価格が上がっていたり、他社がリベートや割引をしているような情報があったら知りたいですよね。アメリカでは、既にそのような価格追跡サービスを提供しています。私たちの市場でも遅かれ早かれこのようなサービスが登場するでしょう。しかし、これは処理するデータが膨大な量になります。そのため、ある程度AIが価格を検知して、事業者であるあなたに提案するという方法は理にかなってると言えます。
UL:この基準は、業界が独自に規制すべきでしょうか?それとも政府の介入が必要でしょうか?
セバスチャン:例えば、EUにはGDPRがあります。準拠するのは正直大変です。周りを見たら準拠できていない会社だらけかもしれません、Stroreganiseを除いては。Storeganiseには準拠するよう厳しく要求していますからね。顧客としては、ちゃんと守っている企業は安心できますよね。業界内で規制する試みもあります。良いことですが、時間がかかってしまうのが難点ですね。
スマートロックによるアクセス制御でも、ある程度の標準化が必要でしょう。そうでなければ、スマートロックを提供する会社に依存してしまいます。だから、私たちはEntryfyを採用したのです。政府基準ではありませんが、基準を満たすドアコンポーネントを使うことで、国内外の政府基準に準拠できます。Entryfyのプラットフォーム自体もAxisをベースにしています。
Axisは、スウェーデンのカメラ開発会社です。彼らが開発したのはIoTのプラットフォームで、Axis Open Platform、略してAOPと呼ばれています。会社でAOPのドキュメントを入手すれば、その上にソリューションを構築することができます。Entryfyはそのような企業の1つで、AOPの上にアクセスソリューションを構築しました。もし私がEntryfyと提携していて、Entryfyが気に入らなくなったとしても、いつでもAOPプラットフォームを使っている別の会社に移ることができるのです。自社で開発することもできます。Axisは規模が大きく世界中に提携先があります。2年後にはどうなっているかわからない小さなスタートアップ企業に囚われることはありません。
UL:とてもワクワクするお話ですが、テクノロジーの進歩がますます洗練されていく中で、テクノロジーに精通していないユーザーや事業者はどう対処していけばいいでしょう?
セバスチャン:事業者は、絶対にコンサルタント会社とチームを組むべきです。無人のセルフストレージの場合、ある時点からすべて自動で運営できるようにしたいと考えると思います。もちろん時々は現場に人手が必要になりますが、それは現地の施設管理業者に任せられます。適切なテクノロジーと地元の施設管理業者を組み合わせれば、自分たちが関与する必要のない事業を持つことができます。自分たちがテクノロジーに苦慮する必要はありません。何事にも目を配り、必要に応じて対応してくれる信頼できるコンサルタント会社を見つけることが大切です。
UL:顧客にとってはどうですか?
セバスチャン:暗証番号を好む事業者もいるようです。スマートロックがあればBluetoothやNFC(近距離無線通信)などを搭載した携帯電話を活用できます。しかし、顧客がアプリを好まないため、アプリを導入したくないという事業者もいます。そういった事業者は、代わりに暗証番号を提供します。ロックについては、このようにテクノロジー導入を避ける方法があります。でもオンライン予約はどうやってテクノロジーを使わずにできるでしょうか。顧客がオンラインで予約したくない場合、代わりにどんな方法があるでしょう?まず考えられるのはコールセンターでしょう。顧客に電話をかけて予約してもらうのです。それも1つの方法ですが、コストに注意する必要があります。最終的にはインターネットを使うのが最も効率的でしょう。大規模な事業者なら予約専用のコールセンターを別途設ける余裕があるかもしれません。しかし、電話をかけてくる顧客とは、より密接なやり取りを今後もし続けなければならない可能性があります。多くの事業者はおそらくこのようなサービスの提供方法は望んでいないでしょう。
記者プロフィール
Anna Shengelia
ドイツ在住のオンラインマーケター、コンテンツ
クリエイター、そしてブランドマネージャー。
日本在住経験があり、文化や言語の壁を越えた
コミュニケーション能力を武器に世界各国で活躍。
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