Unwired Logic株式会社

Sensorberg CEOのStefan Scheuerle氏に聞くセルフストレージにおけるスマートアクセス制御の未来

 

 

| UL: では、まずご自身とSensorbergについて教えてください。

Sensorberg社は、2013年にBeacon(ビーコン)の会社としてスタートしましたが、すぐにIoTの重要性に着目し、IoTの方が私たちには向いていると判断して方向転換をしました。最初の事例からアクセス制御が私たちが提供するIoTプラットフォーム に最適だということは明らかでした。最初の顧客は、ベルリンで大規模なコワーキングスペースを運営する企業で、200台以上のハブを設置しました。私が入社した2018年には、すでに多くのコワーキングスペースと取引をさせていただいていました。ベルリンに来れば、市内のコワーキングスペースのほとんどがアクセス制御に当社の技術を採用していることをご覧いただけるでしょう。また、最近では居住空間の分野にも参入しています。Sensorbergは、スマートスペース、居住空間、アクセス制御、ベルシステム、スマートロッカーなど、様々な事業を展開しています。

最近、コワーキングスペースでロッカーにアクセス制御を導入するプロジェクトを行ったのですが、セルフストレージの前を通りかかった時に「セルフストレージは基本的にロッカーなのだから我々の技術が応用できるはずだ」と思ったのです。そして、2019年からセルフストレージ業界にも事業を拡大しました。当社の3つの主な事業分野の中で、セルフストレージは最も成長が早いです。現在、ヨーロッパの主要な市場すべてで事業を展開しています。私自身アジアで長年仕事をしてきましたが、アジアはとてもエキサイティングな市場で、将来性もあると考えています

| UL: 最近の導入事例をご紹介いただけますか?

数多くのプロジェクトや導入実績がありますが、中でも印象に残っているのがKimba K 21社との複合型プロジェクトですね。K 21は、ビルの上階層がオフィススペースで下階層にストレージスペースがある商業施設で、多くの用途に対応できる当社のプラットフォームが大いに役立ちました。オフィスとストレージの両方が同じプラットフォームで動作することができるので、当社のアプケーションの多様性と柔軟性をアピールできる絶好の機会になりました。これからは、このような複合施設が主流になってくると思います。

| UL: 仕事と荷物の保管のハイブリッドスペースとして、セルフストレージの活用に可能性を感じていらっしゃるのですね。

すでに何人かのお客様でそのような光景を目にします。小規模なB2Bのお客様は、小さなオフィスと保管場所を求めていることが多いように感じます。たとえば、実際のお客様でコーヒーショップを経営している方がいますが、彼女はコーヒーメーカーの販売も行っており、倉庫の中にオフィスと一緒に小さな倉庫も必要なので、近くにストレージがあって役立っているようです。

| UL: スマートアクセス制御システムの利点はなんでしょうか?

まず第一に、鍵の受け渡しが不要になることです。これは、特にさまざまなユーザーがいる建物では、大きなメリットとなります。また、汎用性も高くなります。例えば、会議室の予約や、清掃会社の例を考えてみてください。センサーを備えたスマートルームなら、掃除が必要かどうかを検知します。その結果、清掃員に入室を許可することができます。

| UL: スマートアクセス制御システムは、私たちの生活をどのように変えるでしょうか?

テナント、ユーザー、そして事業者など様々な立場の人々の生活を変えるでしょう。たとえばユーザーの場合、スマートフォンを持っていて、銀行や通信、最近ではワクチン接種記録など、さまざまな用途に使っていますが、それを鍵として使うことができます。それに、顔認証や指紋認証を使えば、より安全・安心です。私もユーザーとしてスマートフォンを活用していますが、より特別感のある体験だと感じます。事業者としては、自分のAirbnbやストレージへのアクセスを誰かと簡単に共有することができるのも大きなメリットです。鍵の紛失によって鍵やドアを交換しなければならないリスクもありません。キーパッドやNFCでも開錠は可能ですが、トレンドは明らかにスマートフォンを使う方向に向かっています。無人化ストレージの可能性も広がりますね。

| UL: セルフストレージのターゲット層がテクノロジーに疎い高齢者であることを考慮した場合、このテクノロジーの影響はどう出ると思いますか?

去年7月のFedessaの調査に、50歳以下の人たちは、50歳以上の人たちよりも、はるかに高い確率で受け入れられているというデータがあります。私たちのお客様の中にも、一部デジタル、一部アナログのストレージをお持ちの方がいらっしゃいます。しかし、特にパンデミック時には、デジタルソリューションの採用率が高まりました。当社のアプリの利用率は2倍になりました。アプリを使いたくないというお客様も必ずいらっしゃるでしょう。プラットフォームの良さは、汎用性があり、例えばスクリーン上の暗証番号を入力するパッドなど、さまざまなソリューションに対応できることです。あるクライアントは、車いすを使用する長期滞在者のために実施したニッチな事業を展開しているのですが、車いすにビーコンを取り付けました。その車いすに乗った人が近づくと、自動的にドアが開く仕組みです。これは主流のソリューションではありませんが、アクセシビリティにはさまざまな使用例や用途があり、何でも可能であることを示しています。

| UL: セルフストレージ業界におけるSensorbergの導入方法と事業者の主なメリットについて説明していただけますか?

これについては、何時間でも話せそうですが手短に話します。まず、私たちのソリューションは実装が簡単です。クリックすれば完了できるよなシステムを採用しています。各ドアにLANケーブルをコネクターに接続すれば、複数のドアを一度に開錠することができるのです。Bluetoothを使用しているので、セルフストレージなどでよくある地下のユニットで起こり得るインターネット接続のない状況でも、すべてのユニットにアクセスすることが可能です。

そして、事業者のメリットですが、まず滞納しているユーザーを例に説明します。通常、事業者は南京錠の上からさらに赤いカギをかけてユーザーが開錠できないようにします。ユーザーがこれを見ると、受付に戻って支払いをしなければならず、支払い後も入金が確認できた電話しなければなりません。さらに、別の従業員がドアのところまで行って上からかけた赤いカギを外さなければなりません。このような面倒でストレスのたまるプロセスに数日かかる場合もあります。しかし、デジタルのソリューションならユーザーはアプリでストレージがロックされていることをすぐに確認することができます。モバイルバンキングなら、支払いもすぐに行えます。支払いを確認できた瞬間にシステムが自動的にロックを外すことができます。ユーザーにとっては手間が省け、事業者にとっては解錠のために従業員を現地に行かせる人件費などを節約することができるのです。

もう一つ、現実的な例を挙げてみましょう。テナントが退去する際に、南京錠で鍵をかけたまま退去してしまうことがあります。その場合、事業者は鍵屋に頼んでストレージを開けるしかありません。しかし、デジタルドアなら、そんなことは起こり得ません。テナントが退去したら、アクセス権は自動的にはく奪されるからです。

B2Bの例に戻りますが、郵便配達の人が来た時にエントランスとユニットのドアを開けておく、なんていうこともできます。すべて遠隔で行えるのがこのテクノロジーの面白い所です。アクセス制御を更にコントロールすることが可能になるのです。

詳しいデータを収集できるのもメリットの一つです。もちろん、データセキュリティや法律の範囲内で行わなければなりませんが、理論的には、誰が、いつ、どれくらいの時間、ドアを開けたのかが分かるようになるのです。デジタルアクセスを通じて、事業者は膨大な利用データを得ることができます。

要するに、デジタル化にはメリットしかありません。古いアナログのストレージも、よりデジタルな体験ができるように改造する必要があるのではないでしょうか。

| UL: 欧州、北米、アジアにおいて、スマートアクセス制御の市場の主な違いは何だと思われますか?

全体的に市場や導入率はまだ初期段階にあります。少なくともヨーロッパはアメリカよりも先を進んでいるかもしれません。先日、アメリカのオンライン会議に出席したのですが、ユーザーのスマートフォンにコードを送信するソリューションが「革新的だ」として紹介されていましたが、私はそうは思いません。スマートフォンへのコード送信は革新的ではありませんし、あまり安全とも言えません。

一方で、アジアはアプリを使うことにオープンで、新しいテクノロジーを取り入れるのも早く、デジタルアクセスには最適な市場だと思います。テクノロジーに精通しているため、既に革新的なアクセス制御システムを導入しています。既にソリューションを持っているため、自社テクノロジーが既存のものより優れていることを、どのように説得するかがカギとなるでしょう。その点を踏まえても、アジアは市場としてとても魅力的だと思います。アメリカも魅力的ですが、今のところ当社が進出することは考えていません。

| UL: 最後に、スマートアクセス制御システムについて、何かご意見があれば聞かせていただけますか?

アクセス制御システムは、ダイナミックかつオープンなものであるべきです。常に発展し続けなければなりません。だからこそ、オープンな規格やAPIを使うべきだと考えています。当社のようなプラットフォームを利用する大きなメリットは、すべてのハブやデバイス、アプリケーションをリモートで更新できることです。我々は毎年システムに新機能を追加しています。テスラ社のアプローチに少し似ているかもしれません。例えば、今はビデオ通話で開錠するようなシステムでも、将来的にはアラームが鳴った時にテナントに通知して、どうするか判断することも可能になります。プロセスを事業者からテナントに移行するということです。これによって事業者の労力が軽減され、ユーザーは自分のストレージに関して決定権をより持てるようになり、更なる顧客の囲い込みにつながります。また、収集したデータを活用することで、セルフストレージのマーケティングも発展していくでしょう。ワクワクするような時代がやってきますよ。